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Sunday, December 16, 2012

ジェラール・ドパルデュー、仏国籍放棄?


フランスの大物俳優、ジェラール・ドパルデュー氏がお怒りだ。
16日、Journal du dimanche(JDD)紙は、氏がエロー首相に宛てた手紙を公開状として掲載した。

ことの発端は、12日、エロー首相がニュース番組で、ドパルデュー氏のベルギー移住について「税を逃れるために国境をまたいだところに住むのはかなり情けない(minable)」と発言したこと。

これに傷ついたドパルデュー氏が、沈黙を破って返信。書簡の全文は訳さないが、ル・モンド紙がまとめた記事から抜粋を:

「情けない、『情けない』と言いました?なんて情けないのでしょう」と、仏映画「おかしなドラマ」中の台詞をもじった文言で手紙は始まり、「パスポートと、一度も使わなかった国民健康保険を返上します。私たちの祖国はもはや同じではありません、父に教え込まれたように私は欧州人であり世界市民です」と続く。

さらに「認めて欲しいとは願いませんが、少なくとも尊重されてもいいのでは!」と投げかけ、自分は「今まできちんと税金を払ってきた」し、「14歳で印刷工、荷運び、そして役者として」働いてきた、と振り返る。

「2012年度、所得税の85%を支払った上で私はここを去ります。(中略)私をこのように評価するあなたはいったい誰ですか、オランド氏の首相であるエローさん、お尋ねします、あなたは誰なのですか?私は人を殺めたこともなければ非難されることをした覚えもない、45年間で1億4500万€の税金を払ってきたし、80人に職を与えている(中略)。同情される謂れもなければ褒めて欲しいとも思わないけど、『情けない』という表現はお断りする」と強調。

最後に「私の行き過ぎた部分、生きることへの渇望と愛を踏まえても、私は自由な存在であり、エローさん、私は礼儀正しくありつづける」と芝居がかった調子で締めくくっている。

首相VS大物俳優の対決となればメディア受けは必至で、朝から各ニュースTVは米ニュータウンの惨事そっちのけでこの話題で持ちきり。公開状に対する政界、芸能界からの反応も次々に放送。

しかし、なんだかなー。どっちもどっちだな。ドパルデュー氏、「情けない」などと形容されて面白くないのは分かるけど、文面には「外国に移住する金持ちは私だけじゃないのに、、、」のようなくだりもあり、何だか子どもじみている。

自分の行動に後ろめたさがなければ、なんと言われようと、黙々と堂々としていればいいのに。所詮、政治家の国民に対する政治発言であって、個人攻撃と受取らずに聞き流せばいいのにな、と思う。

しかも、国籍を叩き返すなんて、反響狙いだろうけど、結局言葉だけで実際には無理だろうし、そういうところもお気楽というか。

また、この公開状に対する反応として与党(左派)の大臣らが次々にインタビューを受け、役者としての才能を讃えながらも「国が苦しいときに協力的でない」と残念がったり、他の芸能人からは「パトリオット(愛国者)ではない」と指摘されたり、それも何だかすっきりしない。

基本的に人間は自由であって、公人でも軍人でもないのに、愛国心だの、国への忠誠心だのを持ち出して、人一人の行動を非難する発言はちょっと怖い気がする。

国の税政策があって、それに対する一個人の行動があって。有名人だから行動が公になるのは仕方ないとして、あとは、その行動をどう捉えるか、その行動によってその人の評価を上げるか下げるか、どうでもいいと無視するかは、結局、各自で決めればいいことである。

こんなことでメディアが大騒ぎになるなんて、ほんと、それこそ「情けない」。

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