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Saturday, January 26, 2013

フロランス・カセ釈放帰国と仏メディア


【仏メディア 前編】

フロランス・カセ Florence Cassez さん釈放について、昨日書ききれなかったこと。(釈放までの経緯については昨日のブログ記事参照)

フランスに住む人ならイヤでも気付いたであろう、フロランスの釈放と帰国にまつわる報道はオーバーヒート気味だった。彼女の件を知らない人は、いったい何ごとか?誰この人?と感じたことだろう。

まずは23日夜の、釈放か否かを審理するメキシコ裁判所からの実況中継。まぁ、これはメキシコ側が審理をメディア公開しているので、生中継自体は仏メディアのせいではないけど、iTele やBFMTV などのニュースチャンネルは解説者、評論家、「支持する会」メンバーをこぞって集めて批評大会。その割には昨日書いたように、肝心の審理内容はうまく伝わってはこなかったのだが。

すごかったのはフロランスの母親が、議員など「支持する会」の代表メンバーや、仏ファーストレディのヴァレリー・トリールヴァイレール(Valérie Trierweiler)と共にテレビで審理を追っているというパリのアパートの建物の前。

すずなりの記者とカメラマン。母親のシャルロットはじめ、メンバー全員が出てきたとたんに押すな押すなの大騒ぎ。どの局も我先に映像やインタビューを求めて押し合い圧し合い怒号が飛ぶ。結局、肝心のテレビ画面には揉み合いの映像しか映らないのだから、こういうシーンを見るたびに、まったく非生産的だと感じる。全体主義国家じゃないからね、局同士の自由競争は良しとしても、なんとかならないもんか。

その後、近くのカフェで母親シャルロットと支持メンバーとの記者会見が予定されていて、ここでも「(前のカメラマンに)座れっ!見えないっ!」と怒声の掛け合いがしばし続いたあと、やっと始まる。

娘の釈放の感想、7年間どんなに心配だったか、などを話した後、面白かったのが、メキシコに対する思いを尋ねられたのに対し、シャルロットが「恨みはないわ。もちろん、一部の人が娘を大変傷つけたことは確かだけど、メキシコには良心的な人もたくさんいる。何処でも同じでしょ、それは。悪人もいれば善人もいる。On ne peut pas généraliser(メキシコ人を十把一絡げに評価することはできない)。だから、私の心には恨みとか復讐という感情は全くないのよ」と、静かにしみじみと答えたあと。

シーーーン。

あんなに白熱していた会場が、数秒間静まり返った。期待していた答えと違ったのか。これじゃセンセーショナルな記事が書けないのか。「それを言われちゃ、おしまいよ」ってか。当の母親は聖女のような顔で次の質問を待っているので、この不思議な「間」に、オットと思わず大笑い。

さて、騒ぎは翌24日も続いた。何しろフロランスを乗せた飛行機が戻ってくるのだから。寒い中、空港で着陸を待ち続ける各局の取材人たち。出迎えにはファビウス外相も駆けつける。オランド大統領からは「疲れてなければ今日にでもエリゼ宮に迎える」とのメッセージ。ニュースチャンネルからは「我がTV局のレポーターが一人、フロランスと飛行機に同乗していますっ!」と自慢げな声。

でもね、それほどの扱いに値する出来事なのかな。外国で捕まって裁判の結果釈放されて帰ってきた。たとえ誤審だったとしても、相手は(一応)法治国家。それが、テロリストから解放された人質の出迎えに匹敵する仰々しさ。国を挙げての大騒ぎ。なんか、ちょっと、桁が外れている気がするのは私だけか。。。
【仏メディア 後編】につづく

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